研究概要 |
真核生物由来のゲラニルゲラニル二リン酸(炭素数20)合成酵素は,他の短鎖型プレニル二リン酸合成酵素に関する過去の研究において明らかにされた生成物鎖長決定(CLD)領域中に重要保存残基を欠き,中鎖および長鎖型酵素と類似した配列を持つため,既知のものとは異なる機構により生成物鎖長制御を行っていると推測されてきた.同酵素と系統的に近縁な,好熱性アーキアSulfolobus solfataricus由来ヘキサプレニル二リン酸(炭素数30)合成酵素のCLD領域を,酵母由来ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素の同領域の配列で置換したところ,生成物鎖長はほとんど変化しなかった.この結果からも真核生物由来ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素が他の短鎖型酵素とは異なる部位により生成物鎖長を制御していることが強く示唆された.そこで,過去の真正細菌由来の短鎖型酵素への変異導入実験において,CLD領域以外に存在し,かつ生成物鎖長に変化を及ぼした変異位置を選び,酵母由来ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素の対応するアミノ酸残基に部位特異的変異を導入した.その結果,一部の変異型酵素で生成物鎖長の伸長に成功し,CLD領域外に存在する同部位が生成物鎖長制御に関与していることが示された.さらに,S. solfataricus由来ヘキサプレニル二リン酸合成酵素の対応するアミノ酸残基に部位特異的変異を導入することで生成物鎖長を部分的に短縮できることも明らかになった.これらの知見は,真核生物由来ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素の分子進化経路が他の短鎖型酵素とは異なることを示唆するものである.
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