女性ホルモンであるエストラジオールβ及び男性ホルモンであるテストステロンで処理した受精卵を艀化させ、成熟後のオスの性行動を検定した。成熟したウズラのオス特異的な性行動として、メスの後頭部への噛み付き、マウンティング、交尾の一連の行動を解析したところ、エストラジオール処理ウズラではいずれの性行動も示さなかったのに対し、テストステロン処理ウズラは全く正常であった。次に、エストラジオール処理ウズラを用いて成熟後にホルモンを投与して性行動が回復するかを検討した。脳内でエストラジオールが作用することによりオス特異的性行動が誘導されるとの報告があるが、エストラジオールを皮下に投与したのみではオスの性行動は回復しなかつた。これらの結果より現在は胚時期に形成されるニューロンネットワークの解析を中心に研究を進めている。そのために、エストラジオールの作用を部位特異的に撹乱することを試みている。まず、ウズラエストロゲンレセプターβ遺伝子全長をRT-PCRにより得た。次に、エストロゲンレセプターの機能を阻害するドミナントネガティブ変異体を作製するために、C末端の40アミノ酸を欠失させた遺伝子を作製した。さらに、生体内での機能解析においては効率よい遺伝子導入と遺伝子発現が必須であるため、これらを発現させるためのレトロウイルスベクターコンストラクトを構築した。現在、ウイルスベクターを産生させるパッケージング細胞を作製中で完成後胚の各部位に導入しその影響を解析する予定である。
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