ウズラオスの性行動を制御する脳内ネットワークは、胚時期に作用するエストロゲンの影響下で形成されることから、エストロゲンの役割に着目している。前年度作製したウズラエストロゲンレセプターβの発現ベクターの機能確認とレトロウイルスベクターの作製システムの構築を行った。まず、エストロゲン応答配列をプロモーター直前に挿入し、エストロゲンが作用しているかどうかを検定できるレポーターベクターを作製した。このベクターを培養細胞株に一過性に遺伝子導入したアッセイにより、エストロゲンレセプター発現ベクターの評価を行った。その結果、発現させたエストロゲンレセプターがエストロゲン応答配列を介してエストラジオール依存的に転写を促進すること、及びC末端領域を欠失させたエストロゲンレセプターが他の正常なエストロゲンレセプターの働きを阻害することが確認できた。次に、作製したベクターを一過性にGP293細胞へ遺伝子導入することによりレトロウイルスベクターを生産させたところ、期待通り上清中にウイルスベクターの存在が確認された。そこで、さらに高濃度のウイルスベクターを生産させるために、作製したウイルスベクターをGP293細胞に感染させ、パッケージング細胞の作製を試みた。しかし、クローン化したパッケージング細胞によるウイルスベクターの生産量は、胚に投与・発現させて影響を見るのに必要な量の数十分の一程度であったため、さらに優れたパッケージング細胞の作製を試みている。
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