アレルギーの治療法開発のターゲットとしてIgEとそのレセプターであるFcεRIαの結合を阻害するという試みが注目されている。本研究では、I型アレルギー疾患の治療薬として利用できる抗体分子を単離することを目的とし、すでに単離されているIgEレセプター(FcεRIα)に特異的な抗体の性状の解析および抗体エンジニアリングを行った。 IgEレセプターに特異的なヒト抗体は、20名のヒト末梢血リンパ球由来の抗体遺伝子を用いて作製したヒト一本鎖抗体ライブラリーと可溶性FcεRIαをコートしたプラスチックプレートを用いてバンニングを行い、可溶性FcεRIα特異的ファージクローンを4クローン単離した。単離されたファージクローンに提示されたscFvを大腸菌株(HB2151)に発現させ、抗E-tag抗体カラムにより精製を行いFcεRIαとIgEの結合阻害実験を行ったところ、全てのファージクローン由来のscFv抗体に特異的結合活性が認められた。DNA配列解析の結果、これらの抗体のうち2クローンは同一のクローンであった。FcRε27、FcRε51およびFcRε70と名付けられた3種類のscFv抗体についてIgEとFcεRIα間の阻害活性を調べたところ、FcRε51抗体において結合阻害活性が認められた。このFcRε51は末梢血リンパ球からのIgEを介したヒスタミン遊離を阻害した。さらに単離されたFcRε51抗体の抗体エンジニアリングを行いFab断片への変換を行ったところ、精製したFcRε51由来のFab抗体においてもFcεRIαへの特異的結合活性が認められた。現在この抗体がFcεRIαのどこを認識しているかを調べるためエピトープ解析を行っている。
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