研究概要 |
アレルギーの治療怯開発のターゲットとしてIgEとそのレセプターであるFcεRIαの結合を阻害するという試みが注目されている。本研究では、20名のヒト末梢血リンパ球由来のヒト一本鎖抗体ライブラリーから、すでに単離されているIgEレセプター(FcεRIα)に特異的ヒト抗体(FcRε51)のエピトープ解析を行った。 FcRε51(9μg)をコートしたdishを1%BSAでブロックした後、市販のランダムペプチドファージライブラリー(Ph.D.-7、Ph.D.-12、Ph.D.-C7C:NEB)と反応させ、Tween20を0.1%含むリン酸緩衝液(PBST)で10回洗浄後、FcRε51に結合したphageを酸(pH2.2)で溶出した。回収したファージは大腸菌ER2738に感染後増幅して次のパンニングに用いた。2回目のパンニングでは、前年度に構築したFcRε51 Fabフラクメント(12μg)を用いて行った。無作為に選択したファージクローンの結合活性を調べた結果、Ph.D.-7、Ph.D.-12、Ph.D.-C7Cのライブラリーからそれぞれ35、1、1種類のペプチド配列を有するクローンを単離した。Ph.D.-7,から得られた35種類のモチーフを調べた結果、7merの配列上でコンセンサス領域は認められなかった。一方、Ph.D.-7およびPh.D.-12から得られたファージクローンはFcRε51とFcεRIαの結合を阻害したことから、これらのファージに提示されているペプチドはFcRε51の抗原結合部位に結合していことが示唆された。今回単離したペプチドファージクローンに提示されたモチーフのアミノ酸配列とFcεRIαのアミノ酸配列をclustal W alignmentを用いてホモロジー検索を行った結果、12merのライブラリーから得られたペプチドモチーフは、FcεRIαとIgEのbinding site 1に相当するFcεRIαのD2ドメイン(Nature 406:259-66,2000)と高い相同性が認められた。これらの結果は、FcRε51がFcεRIαのD2ドメインのbinding site 1に相当する領域に結合してIgEとの結合を阻害していることを示唆している。また、単離されたペプチドモチーフはFcεRIαのD2ドメインの構造をミミックしている可能性が考えられ、小分子阻害剤を分子設計するためのlead moleculeとして利用できると考えられる。
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