平成14年度では、TiO_2やCdSeなどの半導体ナノ粒子試料の作製と評価を行い、いくつかの興味深い結果が得られました。 1)ナノ構造を有するTiO_2薄膜電極の作製と評価 色素増感型TiO_2太陽電池の光電変換効率を向上させることそのメカニズムを解明するために、今年度では異なる条件でナノポーラスTiO_2薄膜電極を作製した。SEM観察、光散乱が強くて不透明な試料の光吸収情報を反映できる光音響スペクトルと光電流スペクトルおよび過渡光電流の測定を行い、ナノポーラスTiO_2電極の作製条件(TiO_2ナノ粒子のサイズと増粘剤ポリエチレングリコール(PEG)の分子量)とナノ構造、光吸収と光電流スペクトルおよび光励起キャリアの応答特性との相関について検討を行った。TiO_2ナノ粒子のサイズと増粘剤PEGの分子量の違いによるTiO_2電極のナノ構造の変化によって、その光吸収と光電流および光励起キャリアの再結合速度や拡散係数などは大きく変化することがわかった。これらの結果よりナノポーラスTiO_2電極の作製の最適な条件を見いだすことができる。 2)CdSeとCdSナノ粒子を吸着した試料の作製と評価 化学成長法を用いて、透明電極(FTO)とナノ粒子TiO_2電極基板上にCdSeとCdS粒子を成長させることができた。時間・温度及び物質濃度などの作製条件を制御して異なるサイズと吸着量のナノ粒子試料の作製を成功した。SEM像からCdSeが成長していることが確認でき、光音響スペクトル、光電流スペクトルから、本来FTOとTiO_2が吸収できない波長の光においても光吸収、光電流を検出することができた。これにより、TiO_2上で成長したCdSeは、FTOガラス基板上で成長したものと同様に光吸収し、光電流においてはCdSe内励起された電子がTiO_2へ注入されたことにより分光増感されることが示された。
|