前年度において、アクリルアミド(AAm)主鎖に抗ヒトIgG抗体を固定化したポリマーを合成し、この抗体固定化ポリマーが抗原(ヒトIgG)の添加に伴い、僅かではあるが蛍光変化を示すことを確認した。そこで、今年度は、抗体固定化ポリマーのキャラクタリゼーションと再合成を行い、より大きな蛍光応答を示す系へ改良することを試みた。 最初に合成した抗体固定化ポリマーは、抗体固定化モノマーとAAmを共重合する手法、或いはN-メタクロイルスクシンイミド(MOSu)とAAmから成る活性化コポリマー(MOSu:AAm=1:100(仕込みのモル比))を抗体とカップリングする手法により合成したが、後者の抗体固定化ポリマーの方が抗原添加時の蛍光変化が幾分大きかった。そこで、後者の合成法を採用し、仕込み比を変化させた活性化コポリマー(MOSu:AAm=1:50)の合成を新たに行った。元素分析により評価したコポリマーのモノマー組成比はMOSu:AAm=1:115であった。仕込み比をMOSu:AAm=1:100としたときのコポリマーのモノマー組成比はMOSu:AAm=1:160であったため、新規合成したコポリマーがより多くの活性点を有していることが確認された。そこで、この新しい活性化コポリマーと抗ヒトIgG抗体をカップリングし、抗体固定化ポリマーを合成した。UV測定により、抗体のポリマーへの導入量は1gポリマー中148mgと求められた。場感受性プローブであるCCVJの共存下、得られた抗体固定化ポリマーに抗原を添加した所、添加した抗原濃度(0〜40μg/mL)に対応してCCVJの蛍光強度が増大した。蛍光強度変化は以前合成した抗体固定化ポリマーを用いた場合よりも大きく、定量性にも優れていた。今回の検出系における抗原の検出感度は、約1μg/mLであった。
|