研究概要 |
平成14年度は,アセトニトリル中にいて,カーボン電極に化学吸着した4-NAB(NitroAzoBenzene)の酸化還元反応をその場ラマン分光法を用いてラマンスペクトル解析を行った.その場ラマン分光法は,電極界面の電気化学反応を電位印加しながらラマンスペクトルの測定が可能であり,単分子レベルで化学吸着したNAB分子の新状態を解析できる方法である.溶存酸素の影響を極力抑えた電気化学測定とラマン分光測定の同時測定を試み,カーボン表面に吸着した分子の振動状態の測定にはじめて成功した.得られたラマンスペクトルをガウシアンを用いた振動計算との比較,ガウス関数を用いたスペクトルの最小2乗フィット解析による散乱強度,振動数,半値幅の電位依存性を求め,電極界面におけるNAB分子のレドックス挙動の解析を行った. その結果,電気化学測定により,カーボンに吸着したNAB分子の酸化還元反応は,1電子反応であることが分かり,分子の結合状態が変化することが予想される.次に,その場ラマン分光スペクトルの解析より,その構造はキノリド構造に起因したMethide構造であることが,実験的,理論的に判明した.この構造変化は,NAB分子をスイッチングデバイスとして用いると,この酸化還元反応により,分子内結合骨格構造や構造に由来した電子状態が大きく変化することにより,分子自身の抵抗値が大きく変化することが予想される.この抵抗値の変化が,分子エレクトロニクスデバイスとしてのスイッチング機構の発現と考えられる.
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