研究概要 |
昨年度に引き続き,吸着分子種の幅を広げつつ,電極反応過程の詳細なる検討を行った.アセトニトリル中においていて4-NAB, AB(AzoBenzene)等のアゾ化合物のカーボン電極の吸着過程を中心にその場ラマン分光測定を行った.平成13年度,申請者はMcCreery教授の下で4-NABの吸着過程の分光学的研究を行っており,これまで(a)NABは非常に大きなラマン散乱強度を持つラマンバンドが存在する,(b)カーボン電極へのNABの吸着は比較的強固である,(c)NABは良い電子伝導性をもつなどの実験結果を得ている.今年度も,McCreery教授と共にこの研究課題に関する議論を行うことができている.特にABに関する知見は,NAB分子より分子長が短く,電子移動過程の解析に向いた分子構想であるが,分光学的なその場ラマン測定においては,微分散乱断面積が小さく,スペクトル解析に難しさを有していることが判明した.スペクトル解析手法に改良を加え,バックグラウンド補正等を精度よく行うことにより,スペクトル解析を可能とすることができている.吸着過程の電極電位依存性を検討し,電極界面における分子の配向,単分子層吸着のメカニズム等を解明することができている.さらに,これらの分子の電子移動過程を解析することにより,分子エレクトロニクス材料への可能性も見えつつある.この解析結果を解釈することにより,電極表面に吸着する分子の吸着過程や吸着状態を推測することができると考えている.
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