研究概要 |
本年度は、希ガス吹き付け装置の性能評価試験と実験条件のファインチューニングを行う目的で、IR法で詳細に調べられているアセチレン系の水素原子付加反応についてin-situ ESR測定を行った。4Kで、Ar希釈した水素およびアセチレンガスを、5Kに冷却したコールドロッドに流速1.5std.cm^3/minで5分間ずつ交互に繰り返し40分間蒸着させた。この試料において、信号強度は弱いがビニルラジカルに特徴的なスペクトル線形(7mT(1H),3.7mT(1H),1.6mT(1H))を観測できた。IR研究では、アセチレンへの水素原子付加で生成するビニルラジカルは、その反応性が高いために定常状態では検出できないと報告されている。しかしながら、今回、ESR法を用いると、常磁性中間種であるビニルラジカルを直接観測することができた。 また、昨年度行ったシリル基からの水素原子トンネル引き抜き反応の発展として、炭素・ケイ素と同じIVB属元素のゲルマニウムをエタンに1つ導入したメチルゲルマン(CH_3GeH_3)を取り上げた。CH_3GeH_3とH原子およびCH_3ラジカルとの反応性についてESR法を用いて調べた。いずれの場合も、4K-77Kの低温固相中において、ゲルミル基水素が引抜かれたメチルシリルラジカル(CH_3SiH_2)が高選択的に生成することをESR法で観測した。77KにおけるCH_3ラジカルによる水素原子引抜きの反応速度(k_<Si-D>)は6x10^<-3>s^<-1>であり、(k_<(Ge-D)>/k_<(Si-D)>=870),20K以上の温度領域の見かけの活性化エネルギーとして、E_<a(Ge-D)>=4.1kJmol^<-1>を評価できた(E_<a(Si-D)>/E_<a(Ge-D)>【approximately equal】2)。
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