研究概要 |
本年度は組成の異なるβ-サイアロン(Si_<6-z>Al_zO_zN_<8-z>, z=1,2,3)粉末と比較のためz=0組成に相当するα-Si_3N_4粉末を用いて水熱条件で腐食させ,β-サイアロンの組成と耐腐食性の関係を検討した.試料粉末を蒸留水中に分散し,温度200℃,圧力1.7MPa,12〜150hの条件で試料を腐食させた.腐食前後の重量変化から試料の重量増加率(ΔW/W_0)を求め,XRD,SEM,TEM-EDX,FT-IRによって評価した.α-Si_3N_4試料では,150時間腐食させると10%程度の重量増加を示した.微細構造観察からα-Si_3N_4の粉末粒子の表面に腐食生成物として非晶質SiO_2層が形成していることが分かった.z=1及び2組成のサイアロン試料では150時間で腐食させても5%程度の重量増加しか示さず,優れた耐腐食性を示した.z=3組成のサイアロン試料では,48〜72時間において40%までの著しい重量増加が見られ,非常に腐食されやすいことが示された.腐食のされやすさにかかわらずサイアロン試料に共通して,ハロイサイトとアルミノシリケート系の非晶質物質が生成すること,および腐食生成物は粉末粒子の表面に直接生成するのではなく出発物質が一旦水に溶解し,腐食性生物が析出する機構で腐食が進むことが分かった.以上の結果よりβ-サイアロン(Si_<6-z>Al_zO_zN_<8-z>)のz値が1および2の組成が水熱環境で腐食されにくいことが示された.
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