研究概要 |
昨年度までにα-Si_3N_4とβ-サイアロン(Si_<6-z>Al_zO_zN_<8-z>,z=1,2,3)で腐食機構が異なること,およびβ-サイアロンのz=1及び2の試料が耐腐食性に優れることが明らかとなった.本年度は実験条件を変化させ,腐食挙動を観察した.実験はこれまでと同様,温度200℃,圧力1.7MPaとし,密閉容器に入れる水の量は変えず試料粉末の量を1/10にした条件での腐食,水中に熔解しているSi及びAlの濃度の測定,の2点を中心に行った.評価は腐食前後の重量増加率と,XRD,SEM,TEM-EDXなどによって行った.腐食後に容器の内容物をすべて取り出し乾燥させたので,試料の重量増加が大きいほど腐食が進むことになる.試料の量を少なくした条件では12時間以内に10〜20%までの急激な重量増加が見られた.以前の条件では重量増加が7%以下であったz=1及び2試料でも,この急激な重量増加が見られた.腐食容器内の水中のSi濃度は,どの試料でも約150ppmであった.この値はSiO_2の水への溶解度と一致していた.よって初期の急激な重量増加は試料が水中に溶け出すことによって起こると考えられた.この急激な重量増加を差し引くと,以前の実験条件の結果とほぼ同じ重量増加が確認された.以上,昨年度からの実験と合わせて次の結果を得た.α-Si_3N_4は水によって酸化され試料表面にSiO_2が生成し,腐食は拡散律速の機構で説明される.一方,β-サイアロンは水中に溶け出し腐食生成物が析出するという機構で腐食が進行する.β-サイアロンのz=1及び2は比較的良い耐腐食性を示し,条件によっては窒化珪素よりも重量変化が小さかったが,z=3試料は他の試料と比べて速く腐食されたので,サイアロン中のアルミナの固溶量が増大してz=2を超えると耐腐食性が低下すると考えられた.
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