酸化チタンは物理化学的に安定で、無毒、安価、高い光触媒活性を示す等、多くの利点を有しているが、比較的大きなバンドギャプ(3.0〜3.2eV)を有するため、紫外線しか利用できない。可視領域における光触媒活性を実現するため、酸素欠損及び窒素ドープによる酸化チタンの可視光応答性の付与が注目されている。本研究では、空気中化学的に安定な前駆体TiCl_3溶液を尿素(N_2H_4CO)及びヘキサメチレンテトラミン(C_6H_<12>N_4)等の水溶液と均一に混合し、オートクレーブ反応器に密封し、"均一沈殿-水熱処理"プロセスにより、酸化チタンを沈殿させ、結晶化を行うことによって、可視光領域に光吸収特性を示す結晶性酸化チタン光触媒の生成について検討した。この"均一沈殿-水熱処理"プロセスは可視光応答型酸化チタンの新規合成法であり、合成した粉末は青色、黄色などに着色した酸化チタン微結晶であり、空気中で熱処理すると、褐色、黄色、灰色等に変化し、光吸収特性、比表面積、微細構造等は仮焼処理により大きく変化することが分かった。特にこれまで光触媒として応用する例の少なかったブルブルッカイト相酸化チタンの合成にも成功し、可視光照射によるブルブルッカイト相酸化チタンの触媒活性を評価したところ、市販高活性光触媒P-25に比べ、NO_xの分解除去能力は大幅に向上することが確認された。波長510nm以上の可視光によるNO_xの分解率は35%に達し、波長290nm以上の近紫外線によるNO_xの分解率は65%にも達した。これらの結果によって、ソルボサーマル反応による優れた可視光応答型光触媒の設計指針を明らかにすることができた。尚、チタニアと尿素或しヘキサメチレンテトラミンとのメカノケミカル処理による可視光応答型光触媒の調製についても検討を行った。
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