本研究では、層状ニオブ・チタン酸塩-光機能分子複合体を、層間へのインターカレーションと剥離層コロイド分散系を用いる"柔らかい複合化"との2種の方法で調製する。昨年度、(1)層状ニオブ酸塩K_4Nb_6O_<17>へのトリスビピリジルルテニウム錯体およびメチルビオロゲン(MV^<2+>)の共インターカレーションによる可視光誘起電子移動系の組織化に成功し、(2)層状ニオブ酸塩K_4Nb_6O_<17>剥離ナノシート分散系のゾル-ゲル転移を明らかにした。今年度は、(1)の系の発展として増感色素ローダミン6G(R6G^+)とメチルビオロゲンの共インターカレーションを検討し、(2)ナノシート分散系についてはニオブ酸塩-粘土混合ナノシート分散系の相挙動を調べた。 共インターカレーションについては、K_4Nb_6O_<17>をMV^<2+>、R6G^+と逐次反応させ、MV^<2+>とR6G^+とが層間に共存する層間化合物を合成した。可視光照射により、層間MV^<2+>の還元を示唆する挙動が観察された。MV^<2+>-K_4Nb_6O_<17>層間化合物では紫外光照射でのみMV^<2+>の光還元が起こることから、この挙動は共インターカレートしたR6G^+の増感作用によると考えられた。 ナノシート分散系については、ニオブ酸塩と粘土鉱物との2種の剥離ナノシートを混合させた分散系を調製した。混合ナノシート分散系は見かけ上均一で液晶性を示した。この混合分散系にシアニン色素を加えると色素は粘土シートに選択的に吸着し、偏光可視スペクトルから、粘土ナノシートは等方的に分散していることが分かり、混合分散系内の粘土ナノシートは、ニオブ酸塩ナノシートとは相分離した状態にあると考えられた。これよりニオブ酸塩-粘土混合ナノシート分散系は、液晶配向秩序をもたらすニオブ酸塩ナノシートと機能分子の吸着場として働く粘土ナノシートとが、マクロには均一でミクロには分離して分散した、特異な多成分系であると考えられた。
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