研究概要 |
100℃以上の高温で安定であり、高いプロトン伝導性を持つ高分子固体電解質の創製を目的として、本年度はスルホン酸化ポリイミド共重合体について検討した。具体的には、1,4,5,8-ナフタレン四酢酸二無水物と4,4'-ジアミノ-2,2'-ビフェニルジスルホン酸、および4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリンを共重合させて電解質膜を作成した。スルホン酸化ポリイミド電解質は、強靭な茶色透明膜として得られた。フルオレニル基を含まない膜は熱水に溶解し、酸化安定性も不十分であった(80℃のフェントン試薬溶液中で速やかに分解される)。膜の酸化安定性はフルオレニル基含量(x)の増加にともなって向上し、x=0.2以上の膜は、一時間後においても重量、形状の変化は全く見られなかった。熱重量分析では、25〜180℃における脱水及び250℃以上における膜分解(スルホン酸基脱離)に由来する重量減少が示された。芳香族骨格からなる硬い分子構造のため、分解温度以下で転移温度(ガラス転移点、融点)は見られなかった。いずれの組成のポリイミド電解質膜も20℃、相対湿度(RH)100%において、0.1Scm^<-1>以上のプロトン伝導度を示す。伝導度は温度上昇とともに増加し、フルオレニル基含量が多い系(x=0.3〜0.6)では100℃での伝導度低下が抑制されることを見出した。特にx=0.3の膜は高温安定性に優れており、100〜120℃におけるプロトン伝導度は10^0 Scm^<-1>以上であった。この伝導度は、パーフルオロスルホン酸電解質膜(一般的に燃料電池電解質膜として用いられているNafionなど)にくらべ、1桁高い値である。スルホン酸化ポリイミド重合膜はプロトン含量が多いこと(EW=413)、嵩高いフルオレニル基の存在により剛直高分子(ポリイミド)鎖間に水を保持する隙間が出来ることから、酸化・加水分解安定性と高いプロトン伝導度が共に達成されるものと考えら、高温安定型高分子電解質膜の新しい設計指針を得ることができた。
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