研究概要 |
本研究の最終年度にあたる平成16年度は、これまで本研究遂行中に開発したパラジウム触媒を用いるα,α-二置換ベンジルアルコール類の炭素-炭素結合切断反応の有機合成への応用について検討し、これまでカップリングパートナーとして用いてきた芳香族ハロゲン化物の代わりにアルキンやアルケン等不飽和化合物を用いることで、新たな高効率カップリングの開発に成功した。また芳香族ハロゲン化物とのカップリング反応は、特にビチオフェンへの位置選択的アリール基導入に極めて有効であることがわかった。ビチオフェンを始めとするオリゴチオフェン類はその電気化学ならびに光化学的特性から注目されており、これらに任意のアリール基を導入できる本反応法は有機合成上非常に重要となると考えられる。 一方、本反応の反応機構についても詳細に調べ、ベンジルアルコール類のα炭素-β炭素間の結合を効果的に切断するためには、ヒドロキシ基のパラジウム中心への配位が鍵となることがわかった。そこで類似の構造を有する基質のスクリーニングを行った結果、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン類を同様の反応条件下で処理すると、炭素-炭素結合および炭素-水素結合の切断を伴って新規マルチプルアリール化反応が起こることを見い出した。ここで得られた炭素-炭素結合活性化に関する知見は、ロジウム触媒を用いる芳香族カルボン酸誘導体と不飽和化合物との、一酸化炭素分子の脱離を伴う新規カップリング反応開発にも大いに役立った。
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