研究概要 |
CH_3I-Ag_2Oによるペプチド化合物のN-メチル化反応を利用した生理活性環状ペプトイドの簡便合成法の開発を目指し、免疫抑制活性を示す環状ペプトイド、シクロスポリンO(CsO, cyclo(D-Ala-MeLeu-MeLeu-MeVal-MeLeu-Nva-Sar-MeLeu-Val-MeLeu-Ala-))の液相合成研究を行った。 前年度合成した非メチル化CsOアナログ(cyclo(D-Ala-Leu-Leu-Val-Leu-Nva-Sar-MeLeu-Val-Leu-Ala)のN-メチル化反応を行う前に、CsOの立体構造に関する知見を得る必要があると考え、標品の液相全合成を行うことにした。まず、Cs類の合成研究における問題点である、N-メチルアミノ酸残基が連続する難合成配列(MeLeu-MeLeu-MeVal-MeLeu)を含む保護テトラペプチドをCH_3I-Ag_2OによるN-メチル化を経由して非メチル化前駆体から1段階で収率よく調製する方法を確立した。この方法は、従来まで行われてきた保護N-メチルアミノ酸を段階伸張する方法よりも高収率であった。このフラグメントを利用してCsOの液相全合成を全収率21%で達成した。各種2次元NMRスペクトル及びIRスペクトル解析の結果、合成品は、CsAと同様に4本の分子内水素結合を形成していることを明らかにした。 また、他の分子との結合サイトを導入する目的でNva残基をL-α,γ-ジアミノ酪酸(Dab)に置換したアナログが有用であると考え、保護Dab誘導体の環境調和型新規合成法を確立した。 以上の知見に基づき、次年度はCsOにN-メチル化反応を施し、4つの分子内水素結合に対する反応性を調べ、14年度に合成した非メチル化CsOアナログのN-メチル化反応を行う予定である。
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