研究概要 |
平成15年度は新規研究課題として、π-共役系化合物の1種であるオリゴエンインやオリゴエンジインの効率的な合成法を確立することができた。本合成法は1-ヨード-4-トリメチルシリル-1-ブテン-3-イン誘導体を合成素子とし、単分散なオリゴエンインもしくはオリゴエンジインを収率良く提供する手法である。また、本手法には従来の合成法には見られない、次のような特徴を有する。(1)本手法では、トランス型オリゴマーが合成できるだけでなく、これまでに報告例の少ない(オリゴエンジインについては初めての)シス型オリゴマーの合成が可能である。本手法によりシス体オリゴマーの供給ができることは、これら化合物群の物性研究の面においても重要と考える。(2)オリゴマーの二重結合上の置換基を任意に選択することが可能である。そして(3)オリゴマーの両末端に異なる官能基の導入が可能である。なお、合成素子である1-ヨード-4-トリメチルシリル-1-ブテン-3-イン化合物は、2価チタン反応剤Ti(O-i-Pr)_4/2i-PrMgClの反応特性を利用し、1-トリメチルシリル-1-アルキン、エチニルトリメチルシランおよびヨウ素から容易に合成できる1,4-ジョード-1,3-アルカジエンを原料として得られる。 さらに、上述したオリゴマー合成の原料に用いた1,4-ジョード-1,3-ジエンの位置選択的なヨウ素-マグネシウム交換反応を見出すことができた。すなわち、1に有機マグネシウムアート錯体を作用させると、位置選択的にヨウ素-マグネシウム交換反応が進行することを明らかにした。本反応を利用し、多置換スチレン、または多置換フェノール誘導体の合成法を確立することに成功した。
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