研究概要 |
フォトクロミック(光異性化)色素を導入したクロスリンク剤を開発する前に,次のような予備実験を行った. 種々の長さ・堅さを有するクロスリンク剤ライブラリーの構築をした.アルキル鎖,オキセチレン鎖,さらにはベンゼンやアセチレン骨格を含むものである.ターゲットとするアミノ酸残基は,リジン(Lys)を選択した.二つのLys残基間の距離を考え,ポリペプチド鎖を設計し,固相合成を行った.ポリペプチド鎖とクロスリンク剤の反応性は,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により解析した.また架橋構造を形成することにより,ペプチド鎖の二次構造に与える影響に関しては,円二色性スペクトル(CD)を用いて解析を行った. 反応性において,アセチレン骨格を含むクロスリンク剤がLys残基間の距離に依存性があることが明らかとなった.クロスリンク剤の骨格の中にある程度の堅さを導入することで,残基間の距離特異的な架橋が可能であるかもしれないことを示唆する結果である.つまり,スピロピラン構造をペプチド鎖に導入する場合において,クロスリンク剤とポリペプチド鎖の双方の設計を綿密に行う必要がある.二次構造に与える影響は,室温におけるCD測定においてクロスリンク剤の種類による顕著な差は認められなかった.スピロピラン骨格を含むクロスリンク剤の合成に成功した.今後,このフォトクロミッククロスリンク剤とポリペプチド鎖との反応を行い,詳細に検討していく予定である.
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