研究概要 |
アルキン二分子を適当な三原子連結鎖で繋いだ1,6-ジインと、トリルテニウムドデカカルボニル[Ru_3(CO)_<12>]との反応を詳細に検討した結果、ジプロパルジルエーテルの両アルキン末端にメトキシカルボニル基を導入したジインジエステルを1.5等量用い、10気圧の一酸化炭素雰囲気下にアセトニトリル中120℃で22時間反応を行うことで、新規複核ルテニウム錯体が選択的に90%収率で得られた。この錯体の単結晶を得てX線回折により構造解析を行ったところ、二つの電子欠損性アルキン部位が0価ルテニウム原子上で酸化的環化して双環状ルテナシクロペンタジエンを形成し、そのルテナサイクル部位がもう一つの0価ルテニウム原子に4座配位して、全体として混合原子価の複核メタラシクロペンタジエンカルボニル錯体となっていることが判明した。 この新規複核ルテナサイクル錯体を高機能触媒として活用するため、カルボニル配位子の交換反応を検討した。1.1等量のトリメチルアミン N-オキシドを反応させると、0価ルテニウム原子上のカルボニル配位子が一つが選択的に置換され、トリメチルアミン錯体が高収率で得られた。このアミン配位子の交換反応を更に検討したところ、トリフェニルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2-(ジフェニルホスフィノ)メチルピリジンからは、いずれもアミン配位子がホスフィンで置換されたモノホスフィン錯体が生成した。一方、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタンとの反応では、アミン配位子が一方のホスフィン部位で置換されたのみならず、メタラサイクルを形成している2価ルテニウム原子上のカルボニル配位子一つが、もう一方のホスフィン部位によって置換された結果、二つのルテニウム中心にビスホスフィン配位子が架橋した錯体が得られた。これらの新規錯体の構造は、全てX線回折により明確に決定できた。
|