研究概要 |
最近、我々はアシルポリシラン類[(Me_3Si)_3SiCOR; R=Me, i-Pr,t-Bu,Ad,Ph,Mes]の熱反応により、シリル基の1,3-転位が起こりシレンが容易に生成することを見い出した。また、このようにして生成するシレンの種々の試剤に対する反応性を検討してきた。本年度は、アシルポリシランから生成したシレンとアセチレン類との反応を行い、収率よく位置特異的にシラシクロブテン類を合成することに成功した。すなわちアシルポリシラン類とtert-ブチルアセチレンとの反応を140℃、24時間の条件で行ったところ、2-トリメチルシロキシ-1,1-ビス(トリメチルシリル)-1-シラシクロブト-3-エン誘導体(1)が高収率で得られた。 また、化合物1の反応をさらに様々な温度で行うことにより、シラシクロブテンの熱異性化の機構を実験的に明らかにした。まず、シラシクロブテンのケイ素-炭素結合が解裂してシラブタジエンが生じ、その後トリメチルシリル基がケイ素上に転位して、シクロプロペン誘導体を中間体として生成する。その後、さらにトリメチルシリル基がシクロプロペンのsp^2炭素に転位することによりシラビシクロブタンを経由して、トランス-1-トリメチルシロキシ-1,2-ビス(トリメチルシリル)-1-シラシクロブト-3-エンが合成できることを見い出した。またこの化合物の光反応を行うと、シス体とトランス体の1:1平衡混合物が得られることを明らかにした。
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