リビングラジカル重合法(LRP法)の開始基およびジスルフィドを有する化合物を合成し、それとクロロ金酸(HAuCl_4)を還元剤(クエン酸Na)存在下で混合することにより平均粒径12nmの粒径分布の狭い金ナノ粒子を調製した。この金ナノ粒子を用い、メタクリル酸メチルの表面開始LRPを行った結果、グラフトポリマーの数平均分子量(M_n)と、遊離開始剤から同時に生成するフリーポリマーのM_nはほぼ等しく、また重合率の増加に伴いM_nは大きくなった。分子量分布指数(M_w/M_n)は1.3以下であり、比較的小さな値を示した。グラフト量を求めるために、高分子・金ナノ粒子複合体の元素分析を行った。その分析値と、金ナノ粒子の比重及び表面積、またグラフトポリマーのM_nから、グラフト密度を算出した。グラフト密度は、重合時間に依らず、約0.4chains/nm^2であった。これらの結果から、重合は規制されて進行し、構造の明確な(鎖長および鎖長分布の制御された)高分子が金ナノ粒子表面へ高密度にグラフトされたことが判明した。 Langmuir-Blodgett法により上述した高分子・金ナノ粒子複合体の水面単分子膜を調製し、それをTEM用グリッドまたはマイカ表面に移しとりTEMおよび原子間力顕微鏡観察した。その結果、金ナノ粒子が高分子マトリックス中に規則正しく配列し、粒子間隔はグラフト鎖長の増加に伴い広くなった。グラフト鎖の高密度化と狭い鎖長分布を反映し、系全体の粒子間に高密度グラフト膜特有の圧縮反発力が均等に作用する結果、粒子は秩序構造を形成したと考えられる。
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