本年度は重合時に安定で、なおかつ水中で機能する新規機能性配等錯体の開発を目的として合成経路の探索を行なった。 (1)ケージ型O-グリコシド錯体の合成の試み まず対イオンにより構造変化が誘起されるN-グリコシド錯体を高分子化及び水中での安定化を目指して、そのO-グリコシド類縁体の合成を試みた。合成はpenta-O-acetyl-β-_D-glucopyranoseとtriethanolamineとの間でBF_3・OEt_2を触媒とするグリコシル化反応を試みた。BF_3・OEt_2添加直後、不溶性の塩が析出し、反応は殆ど進行しなかった。これはおそらく塩基性の非常に高いtriethanolamineとルイス酸性の強いBF_3・OEt_2との間で直ちに塩が形成され、塩として反応系の外に出てしまうためであると考えられる。反応条件を種々検討したが結局、この経路でのO-グリコシル体の合成を断念した。 (2)三配座型O-グリコシル錯体の合成の試み 上記のケージ型錯体合成を2-aminoethylβ-_D-glucopyranosideと2-bromoethylβ-_D-glucopyranosideとのN-アルキル化により行なうことを計画した。そこでまずはじめに2-aminoethylβ-_D-glucopyranosideを配位子とするCo錯体の合成を試みた。この配位子はpenta-O-acetyl-β-_D-glucopyranoseの2-bromoethanolとのO-グリコシル化、NaN_3によるアジド化、脱アセチル化を経て最後にPtO_2によるアジドの水素添加により合成した。この配位子と[CoCl (NH_3)_5]Cl_2を水中60℃で反応させた。得られた溶液はCoのd-d遷移に対応するエネルギー領域でコットン効果を示し、このことはO-グリコシル錯体が形成されていることを示している。現在、この経路での錯体合成及び、その単離方法について検討を行なっている。
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