研究概要 |
ケイ素系デンドリマー合成のための鍵化合物として、鎖状の1,3-ジヒドロトリシランおよび1,3-ジヒドロ-2-エトキシトリシランを、それぞれ、対応するジクロロオルガノシランとクロロヒドロオルガノシランとの電極還元カップリング反応により合成した。さらに、トリクロロシランとクロロオルガノシランとの電極還元カップリング反応により、対応する枝分かれ状テトラシランを合成した。これらのオリゴシランの合成について、電極材質の効果を検討した結果、難還元性化合物の電極還元において我々がこれまで明らかにしてきたマグネシウムの有効性があらためて確認された。また、電極還元条件下において危倶されたSi-HおよびSi-OEt結合に由来する副反応は特に観察されず、これらの置換基を段階的にSi-C1結合に変換し、さらなるケイ素-ケイ素結合形成反応に利用できることが明らかとなった。マグネシウム電極の有効性については、脂肪族エステルの電極還元系における反応機構的検討から、マグネシウムイオンの電子移動触媒としての作用が示唆される結果が得られており、マグネシウムイオンの他、ランタノイド金属イオンにも同様の効果があることを見出した。クロロシラン類の電極還元カップリング反応においても、マグネシウムイオンを共存させれば、白金電極を用いる電解系でも本質的には進行することを確認しており、この知見は、上記テトラシランをコア分子とする第1世代ケイ素系デンドリマー合成に対して有用である。得られたオリゴシランのケイ素-ケイ素結合については、電極還元条件下での反応性を確認中であるが、ポリシランで観察された、ケイ素-ケイ素結合開裂反応は現在のところ確認されず、ケイ素-ケイ素結合の電気化学的活性化については、オリゴシラン上の置換基に窒素系官能基を導入するなどの工夫が必要と判断され、これについても検討中である。
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