ケイ素系デンドリマー合成の鍵化合物として、前年度までに、トリクロロシランとクロロオルガノシランとの電界還元クロスカップリング反応により、対応する枝分かれ状テトラシランの合成に成功したことを受け、濃度比、通電量等、種々電解条件を探索したが(本年度研究実施計画(2))、十分な反応収率が得られなかった。そこで、実施計画(1)に掲げた、Si-Si結合の再活性化過程の制御について検討を集中し、ポリシランの電解条件下における挙動を精査した。その結果、ケイ素上にフェニル基を有するポリシラン(数平均分子量約3000)を、マグネシウム電極を用いて、50mA定電流条件下に置くことで、分子量が急激に減少することを確認した。この分子量低下は、アルキル置換ポリシランよりもフェニル基置換ポリシランの方が顕著であり、Si-Si結合の還元的な切断によるシリルアニオンの生成が示唆され、シリルアニオンをある程度安定化する置換基の導入が、この過程には重要であることが明らかとなった。電解還元条件下にあるポリシランに、ジクロロオルガノシランを添加すると、分子量の増大が確認され、電解中発生したシリルアニオン種が新たな重合生長末端となることも確認した。このことから、ケイ素上の置換基効果を利用した選択的Si-Si結合の電気化学的活性化には、ジフェニルシリレン構造の導入が適当であると判断し、実施計画(3)にしたがったSi-Si結合伸長反応については、ジフェニルシリレン構造を有するオリゴシランを用いて、電解還元条件下でのクロロオルガノシランとの反応について検討を行った。現在、その生成物の確認中であるが、ケイ素鎖の部分的伸長は可能である。第2世代のデンドリマー合成のためのコア分子としては、立体障害の軽減は必要であり、ジシランあるいはトリシラン単位を伸長させ、重合生長末端間の距離を大きくする分子設計が必要であると考えられる。
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