研究概要 |
シクロトリホスファゼン誘導体やトリフェニルメタン誘導体は結晶化する際に、自己組織的に会合し、ナノスケールの空孔を形成すると共に、その空孔内に有機分子を取り込んだクラストレート(結晶格子包接化合物)を形成することが知られている。また、空孔のサイズは芳香環のサイズや置換基により制御可能である。そこで、本研究ではこれらの化合物を用いて導電性高分子鎖一本に相当するナノ空間を構築し、この空間に取り込む形で導電性高分子鎖一本を単離する。そして、これまでバルクとして捉えられてきた導電性高分子の電気・光学的物性を独立した一本の高分子鎖状態で解明して、分子デバイス作製のための基礎データを収集する事を目的とした。 シクロトリホスファゼン誘導体であるトリス(2,3-ナフチレンジオキ)シクロトリホスファゼン([P(O_2Nap)=N]_3)とポリアニリンをN-メチル-2-ピロリドン溶媒に溶かし、室温で静置したところ、沈殿物として、[P(O_2Nap)=N]_3が自己組織的に会合して生成したナノ空間にポリアニリンが包接した組織体が得られた。この目的とする包接組織体の生成は元素分析、粉末X線回折測定により確認した。これに対して、自己組織化によ[P(O_2Nap)=N]_3よりも小さいナノ空間を形成するトリス(1,2-フェニレンジオキ)シクロトリホスファゼン([P(O_2Ph)=N]_3)とポリアニリンからは包接組織体は得られなかった。また、[P(O_2Ph)=N]_3とポリ(3-ヘキシルチオフェン)からは、ヘキシル基をナノ空間に取り込んだ包接組織体が得られた。ポリ(3-ヘキシルチオフェン)は固体状態で蛍光を発するが、[P(O_2Ph)=N]_3との包接組織体は固体状態で発光しないことがわかった。
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