高分子ゲルの合成において、結晶のように全く欠陥が無い理想的な網目構造を構築することを最終目標として、高分子ゲルの合成過程において不可避に発生する不均一性の発現メカニズムを解明することを目的として研究を進めている。 【ジャングルジム様ゲルの調製条件の決定】 末端架橋型のポリイミドゲルを使うとジャングルジムのように整った新しい構造体を構築できる可能性がある。長さの揃った棒状分子の末端を規則正しく結合して欠陥の無い網目構造を構築したい。酸二無水物PMDAとジアミンODAを用いて、まずオリゴイソイミドを合成し、ここに秩序性の高い三官能性対称型アミンTAPBを末端架橋剤として加えて、ポリイソイミドゲルを合成した。このゲルを化学イミド化を経て熱イミド化を行う方法でポリイミゲルにしたところ、有色であるが透明な(サブミクロンスケールで均一な)ゲルが得られることがわかった。弾性率の測定結果からも、欠陥の少ない強固な網目構造ができていることが支持された。 【ジャングルジム構造の形成過程と形成後の不均一性の測定】 ゲルの動的光散乱ではゲルの網目構造に不可避に存在する不均一性のために定量的測定が著しく難しい。そこでゲルのキャラクタリゼーションに特化した走査型顕微光散乱を用いるとともに、不均一性を克服してゲル全体の性質を反映したアンサンブル平均相関関数を算出する公式を新たに導出して適用し、ゲル網目のサイズ分布を非破壊で定量する方法を確立した。この方法で、ビニルポリマーゲルにおいて網目構造形成後の不均一性が、膨潤によって均一化する現象を初めて見出した。 【近接場光学顕微鏡を用いた局所的網目構造の観測】 近接場光学顕微鏡に光子相関分光装置を組み込んでナノスケールの局所的なダイナミクスを直接測定することを検討した。走査型顕微光散乱を用いた光子相関分光測定を行い、ナノスケールの微細な網目のブラウン運動について定量的な測定が可能であることを確認した。
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