高分子ゲルの合成において、結晶のように全く欠陥が無い理想的な網目構造を構築することを最終目標として、高分子ゲルの合成過程において不可避に発生する不均一性の発現メカニズムを解明することを目的として研究を進めている。 【近接場光学顕微鏡+光子相関分光装置の試作】 ナノスケールの局所的網目構造の動的挙動を観測するために、近接場光学顕微鏡に光子相関分光装置を組み込むことを試みている。光子相関分光を行うため、光散乱用コンピュータに、高速FIFOボードとD/Aボードを組み合わせるにより光子相関分光計(コリレータ)を自作した。市販品で相当する性能のものは500万円以上と高価なため、安価でありながら近接場における光子相関分光に適したコリレータを設計した。今回、非常に簡素化された回路の設計に成功し、簡素化による処理速度の向上が見られ、10^<-7>秒での測定が可能になった。今後はこのコリレータと近接場光学顕微鏡を組み合わせて、局所場での光子相関分光を実現したい。 【分子レベルでのゲル化の素過程観測】 近接場光学顕微鏡を用いてナノスケールのゲルのダイナミクスを測定するために好都合な条件を見つけるために、光応答性でジャングルジム型の網目構造をもつポリイミドゲルを合成した。このゲルの内部においてナノスケール以下の微粒子(単分子)が網目に補足されたり、網目の中を自由に動く様子を、申請者が開発した走査型顕微光散乱装置で観測した。今後はこの新たな光応答性ポリイミドゲルを本研究の対象とし、蛍光プローブを微粒子として導入した上で、近接場光学顕微鏡による観測を目指したい。
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