液晶性高分子としてポリパラフェニレンビニレン(PPV)に着目し、定法に従ってπ共役が飽和に達した長さである10量体程度のものを合成した。これを末端アミノ化されたポリエチレングリコール(PEG)(分子量5200)とC=N結合によって連結させた後、シアノ水素化ホウ素ナトリウムによって還元することで安定なC-N結合へ変換した 得られたブロックポリマーを良溶媒であるTHFに溶解し、そこにPEGに対する選択溶媒であるH_2Oを加えた。その結果、ポリマーは可溶であるもののUVスペクトル測定からPPV吸収のブルーシフトと淡色効果が観察されたことから、PPV部分が不溶化して会合していることが示された。また、蛍光スペクトル測定からもPPV部の消光が観察されたことから、PPVの会合が示唆された。 溶液中での会合体の形態を調べるために光散乱測定を試みたが、十分な散乱強度が得られず測定できなかった。そこで、ポリマーのTHF溶液をキャストし乾燥させた状態でTEM観察を行ったところ、直径が十nm程度で長さが数百nmのひも状の集合体が観察された。直径がPPV二分子分に相当することから、ひも状集合体の軸方向に対して垂直にPPVが並んでいることが示唆された。次に、AFM観察を行ったところ、直径20nm程度のひも集合体が確認されたことから、TEMではコアだけが、またAFMではシェルのPEG鎖も含んだ構造が観察されたものと考えられる。 ブロックポリマーのDSC測定を行ったところ、PEGおよびPPVのTmに由来する吸熱がそれぞれ60℃と160℃に現れた。次に、偏光顕微鏡観察を行ったところ、50〜150℃の間で液晶相を示した。つまり、この液晶相はひも状会合体の配向に由来するものであることが示唆された。 以上で述べた結果より、PPV-b-PEGが会合して液晶相を示しうるほど剛直なひも状集合体を与えることが分かった。コア部の導電性について興味が持たれる。
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