研究概要 |
本研究では,分子ナノワイヤーの構築を目指すにあたり,剛直で分子間水素結合により形成されるポリペプチドβ-sheet構造に着目した。ポリペプチドのアミノ酸配列による主鎖2次構造の制御,さらに単分散性による自己整合性を利用した3次元高配向性会合体の構築と制御を目的とする。具体的には,アミノ酸配列の中でも特にβ-sheet構造を形成すると考えられるシーケンシャルポリペプチドを調製し,(1)β-sheet構造型ペプチド分子が有する多点的な分子間水素結合,(2)分子が有する鎖長による自己整合性,を新たな分子間相互作用として着目し,自己組織化的に構築される高配向性分子会合体の創成と構造評価について検討を行った。この結果,(1)NaClの添加に伴い,LysineとLeuicineが交互に配列したペプチド(Fmoc-,Pyr-(LK)_8)において,β-sheet構造を主とした二次構造へと転移した。(2)Fmoc-,Pyr-(LK)_8は,一定量のNaClの添加によりβ-sheet構造へと転移し,かつ末端の発色基が近接している構造,すなわち自己整合性を有した構造を形成している可能性が示された。(3)Fmoc-(LK)_8では,幅が数nmのナノワイヤーの形成が確認された。Py-(LK)_8では,小さな繊維状会合体が寄り集まって形成された繊維状の会合体が観測された。この小さな繊維状会合体はナノレベルのらせん構造を形成した。このようなナノ構造は,ランダムなアミノ酸配列では観察されなかった。以上の結果は,高配向性1次元会合体の構築と,さらなる分子間相互作用(本申請書における錯構造形成能)を分子設計により組み込むことで,この会合構造を利用した3次元集積化への展開が可能であることが示唆された点で非常に重要な結果と考えられる。 今後,この超分子構造を鋳型とした金属イオンの配向制御並びにこの構造により発現する光学特性について詳細に検討していくことを目的とする。
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