研究概要 |
本年度は,大規模宇宙構造システムの非線形挙動の特性を明らかにする為,重力安定型太陽発電衛星の運動解析を行った.構造そのものが有する非線形性についての動特性評価に加え,軌道・姿勢・構造の3要素が相互に影響する非線形システムに対して,ポテンシャルエネルギーを用いた安定性評価法を提案した.ここでは,ポテンシャルエネルギーとして,重力・遠心力によるポテンシャルエネルギーと構造の歪エネルギーの3つの総和を考慮する.従来,別個に取り扱われることが多かった軌道・姿勢・構造の相互干渉を同一の物理指標を用いることで統合的に表現することが可能となった. まず,重力安定型太陽発電衛星に対して,姿勢および構造変形の安定性の評価をポテンシャルエネルギーを用いて行った.次に,この評価の妥当性を動力学解析の結果と比較することによって示した.これらの結果より,提案手法により安定性が評価可能であることと,検討した衛星システムが通常運用状襲においては十分安定であることが判明した.ここでは,外乱要因として太陽輻射庄,空気抵抗,軌道傾斜角の存在を検封とした.安定性をさらに向上させるために,衛星形状と安定性に関する評価を行い,衛星の形状変更を行う場合の指針を与えた. さらに大型宇宙構造物に対する分散システムの構築法について,モジュール間の結合剛性の調整によってポテンシャル形状の整形を行うことを検討した.モジュール間の結合部材として,テンション部材.コンプレッション部材といった部材剛性に非線形性を有するものを用いることで,'ポテンシャル形状の整形が行うことが容易となり,安定なシステム構築への糸口となることを示した.
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