研究概要 |
大規模宇宙構造システムを対象に,構造物の特性と姿勢変動の関係を明らかにした.具体的には,重力傾斜安定型太陽発電衛星を対象として,1.構造変形と姿勢変動の連成に関する解析 2.軌道上での展開・組み立てシーケンスが姿勢変動に及ぼす影響の解析 の2点に関して研究を行った. 前者では,発送電部のパネルの変形・テザー部の伸縮を考慮したRigid Body Spring Modelによってモデル化した衛星について,軌道環境(太陽輻射圧,高次の重力モデル,空気抵抗)を模倣したシミュレーションを行った.様々な衛星の剛性パラメータ・形状に対する数値実験の結果,構造変形が姿勢変動や軌道運動と連成する衛星システムのシステムコンフィギュレーションを明らかにした.さらに,発電効率の向上の為に提案されている,回転軸を有する反射鏡を持つ発電衛星の安定性の解析を行い,想定したシステムコンフィギュレーションでは十分な安定性を維持できないことを示した. 後者では,軌道上での展開シーケンスによる姿勢変動への影響について解析を行った.展開速度をパラメータとして,展開挙動が姿勢変動に与える影響が,ある閾値を境に変化することを明らかにした.これらの挙動のメカニズムを解析的に説明することは今後の課題である.さらに,キロメートルオーダーの衛星においては必須となる軌道上での組み立てを想定し,組み立て手順による安定性の評価を行った.その結果,テザーを用いた重力傾斜安定方式では,初期のテザー長が長すぎる場合に,ロール軸周りの姿勢変動が軌道運動と共振しやすいことを明らかにした.また,組み立て初期段階におけるパネル形状のアスペクト比が大きすぎる場合は,ヨー軸周りの姿勢変動において,静的な復元トルクは大きいが動的な姿勢変動の安定性が失われることを明らかにした.
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