研究概要 |
LE-7Aロケットエンジンの開発で大きな問題となったのがターボポンプのキャビテーションである.現在の技術ではキャビテーションの発生とその影響を厳密に予測するのは非常に困難である.今後の高性能化・高効率化を達成するには高速低温流体中キャビテーションの数値解析コードが有効となる.著者が開発した液体窒素の先細末広ノズル中のキャビテーション気泡流コードをベースに,相変化の熱力学モデルを改良し,3次元複雑キャビテーション場が解析できるよう計算負荷の軽い気泡径分布モデルを新たに導入したコードを開発した. 気泡成長モデルはキャビテーション気泡流の相変化モデルの基礎である.気泡成長モデルは一般に慣性力支配モデルと伝熱支配モデルに分類できる.前者は気泡周りの液体の半径方向慣性力により成長収縮運動が決定されるモデルであり比較的短い時間スケールの支配モデルとなる.後者は気泡周りの液体の温度境界層発達によって成長収縮運動に必要な相変化量が決定されるモデルであり比較的長い時間スケールの支配モデルとなる.静止液体中の気泡成長における検証の結果,目標とするキャビテーション場の時間スケールでは伝熱支配モデルの採用が適当であることがわかった. 3次元複雑キャビテーション場の解析のため,計算負荷が軽く,循環流れ等も考慮し同一空間内に時間履歴の異なる様々な半径の気泡が存在することを取扱う必要がある.そこで従来のラグランジェモデルの長所である様々な半径の気泡が混在できる点を維持しつつ,欠点である気泡数密度に比例して計算負荷が大きくなる点を改良するため,気泡計算にオイラ場を用いた気泡径分布モデルを採用した.本モデルを静止液体中および1次元ノズル流れにおいて検証し,妥当性を確認した. 以上2つのモデルを2次元先細末広ノズル流れ場に適用し従来の実験結果と定性的な一致を得た.
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