研究概要 |
振動マッハ波による超音速境界層の受容過程に関する基礎研究として,平成14年度は主に以下の研究を行った. (1)固有撹乱の発生過程 超音速風洞側壁に形成される乱流境界層から放射される振動マッハ波を,局所撹乱源から放射される微小撹乱としてポテンシャル流理論の解で表し,境界層平板の前縁位置を撹乱源中心から引いたマッハ線上に置いた場合の超音速境界層の受容過程について数値計算で調べた.撹乱源と反対側の境界層内では,固有撹乱が前縁から約1/2波長程度で生成されることを確認していたが,前縁近傍での変動を詳しく調べた結果,マッハ波の入射によって前縁近傍に振動Stokes層と類似の変動が形成され,これが流れにのって流下するとともに固有撹乱(T-S波動)へ成長すること,励起された固有撹乱の振幅はこの振動Stokes層の強さに比例することを明らかにした.この結果は,従来検討されてきた(境界層板が存在しない場合の)主流中の変動振幅から境界層内に励起される変動の振幅を予測することはできないことを示唆している.また,撹乱源側の境界層で固有撹乱が卓越する場合と強制撹乱が支配的になる場合があるが,固有撹乱が卓越する場合には前縁で振動Stokes層が形成されていることを確認した. (2)前縁形状の影響 物体前縁の形状がTS波動の形成に及ぼす影響を調べるため,平板上に形成される境界層排除厚さをもとにした薄い放物線形状の断面をもつ前縁部に振動マッハ波が入射する場合について数値計算を行い,平板境界層の場合との比較を行った.前縁近傍形成される振動Stokes層の振幅は,放物線形状物体の方が平板の場合よりも大きいが,励起される固有撹乱の振幅は平板の方が大きく,境界層の受容性は,前縁での流れ場(定常流)の空間変化がより急激な平板の方が強いことがわかった.
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