本年度はウメ果実に集積するカロテノイドの種類および量的な差異を明らかにするため、ウメ品種'南高''白加賀''織姫''豊後(久留米)''改良内田'を用いて、未熟果と成熟果のカロテノイド含量をHPLCで分析した。その結果、果実1グラム当たり全カロテノイド含量は樹上で黄熟する'織姫'では成熟果で著しい増加が認められるものの、樹上で黄熟しない他の品種はほぼ横ばいもしくは減少傾向にあった。 また、昨年度までに'織姫'において明らかとなった、成熟後期で認められるカロテノイドの蓄積に対応していたフィトエン合成酵素遺伝子の完全長cDNAおよびゲノムDNAを単離した。 フィトエン合成酵素cDNAの部分長をプローブとして発現解析を'南高''白加賀''織姫'の果実に対して行った結果、'織姫'は樹上での黄熟とともに急速に転写産物が増加したが、'南高''白加賀'では転写産物の増加は、'織姫'に比較して低かった。しかし、'南高'の果実を収穫後、室温にて黄熟させた果実では強い発現が誘導された。これらのことから、黄熟とフィトエン合成酵素遺伝子の発現には強い関連があることが推測された。 現在は収穫後の黄熟を促進するエチレンの影響について解析するとともに、これらウメ品種の葉から抽出した全DNAを用いてフィトエン合成酵素遺伝子を指標とした品種間でのバンドの多型とカロテノイド集積パターンとの関係について解析を行っている。
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