研究概要 |
1穂穎花数の多い品種であるアケノホシと少ない品種である日本晴について穂首分化期前後と穂ばらみ期にそれぞれ3段階の気温処理を加えて,気温と1穂穎花数の関係を調査した.温度処理は昼/夜温で32/24,29/21,26/18℃の3段階とした.穂首分化期には気温が上昇するほど1穂分化穎花数が減少した.この減少は分化1次枝梗数が減少したためであった.茎葉の乾物重や窒素含有量は温度によってほとんど変わらなかった.そのためシンク・ソース関係よりは温度の直接的な影響で分化穎花数が変化したと考えられた.穂ばらみ期の温度処理では高温によってアケノホシでは穎花の退化が増加した.茎葉重が高温処理によって減少したので,高温によって幼穂へ移行すべき炭水化物などの同化産物が呼吸によって消耗し,その結果,穎花の退化が増加したと考えられた. 短日処理の時期を異にした水稲によって,穂首分化期の茎頂分裂組織の大きさを変えた水稲に,穂首分化期に3段階の窒素処理(無窒素,標準,標準の4倍)を与えた.その結果,窒素施用量が多いほど1穂分化穎花数は増加した.このとき穂首分化期の茎頂分裂組織の大きさは1穂分化穎花数と正の相関関係にあった.しかし,穂首分化期以降は茎頂分裂組織の急速な生長のために穎花数と茎頂分裂組織の大きさとの相関関係は明瞭でなくなった. 以上の結果から,穎花の退化にはシンク・ソース関係,とりわけ幼穂に供給される炭水化物量が密接に関わっているが,穎花の分化は茎頂分裂組織の大きさや構造が関わり,シンク・ソース関係が直接関わっているようではないと推察された.
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