研究概要 |
ツツジ類において亜節間交配のような遠縁交雑では,高い頻度でアルビノ実生が発生する.このアルビノ実生は常緑性ツツジの葉緑体ゲノムとキレンゲツツジの核ゲノムの不和合性により生じ,また,実生がキレンゲツツジの葉緑体ゲノムを持つ場合にのみ,緑色の健全な個体が得られることが明らかになっているが,その割合は種子親に用いる常緑性ツツジの種類によってさまざまである.本年度の研究では,オオヤマツツジを種子親にしてキレンゲツツジと交配を行ったところ,比較的多くの緑色で健全な実生が得られたので,アルビノ実生出現の回避におけるオオヤマツツジの交配親としての有効性について検討した.常緑性ツツジ5種6系統を種子親にしてキレンゲツツジとの交配を行ったところ、いずれの交配でも淡緑色実生もしくはアルビノ実生が出現した.しかしながら,ミヤマキリシマ,サタツツジおよびオオヤマツツジを用いた交配では緑色実生が得られ,その出現頻度は,種子親がオオヤマツツジの場合に19.8〜28.8%と最も高かった。得られた緑色実生は、すべてキレンゲツツジ由来の葉緑体DNAを有していた。今回、オオヤマツツジを用いた交配では、高い割合で健全な緑色実生を得ることができたことから,ツツジ類の遠縁交雑において本種を種子親に用いることでアルビノ実生の出現を回避できる可能性が示唆された.また、これまでの報告で、オオヤマツツジを種子親に用いてウンゼンツツジと交配した場合、得られる実生の葉緑体DNAは、本実験の結果と同様に、比較的高い割合で花粉親由来となっていたことから、葉緑体DNAの遺伝は、用いる種子親による影響が強いものと思われた。
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