研究概要 |
本年度は広義のペチユニア属の分子系統を調査した。未記載の9分類群を含むペチュニア属52分類群、品種2系統について全DNAを抽出し、2種類の葉緑体遺伝子間領域をPCR法によって増幅し、この増幅産物をテンプレートとしてダイターミネーション法によるシークエンス反応をおこない、ABI Prism 3100 Genetic Analyzerによって塩基配列を決定した。調査した遺伝子間領域は(1)matKを含むtmK領域、(2)tmT-L-F領域の2種類であった。決定した塩基配列をGenBankのNicotiana tabacumを外群として最節約法と近隣結合法により解析した。 どちらの方法によっても広義のペチュニア属は染色体数が2n=14である狭義のPetuniaと2n=18であるCalibrachoaの2つの単系統群に分かれ、Wijsman (1985, 1990)の結論を支持した。CalibrachoaはさらにC. parvifloraとC. pygmaeaの2種からなる単系統群と残りの種からなる単系統群に細分された。 狭義のPetuniaの単系統群内の遺伝的距離はCalibrachoaのものに比べ有意に小さく、最節約法による厳密合意樹は多分岐であった。また、形態による従来の種内分類群を支持する単系統群は得られず、分子系統樹はむしろ地理的分布を反映していた。これは狭義のPetuniaが急速に進化したことを示唆するものと思われる。 Calibrachoaの2つの単系統群は従来の交雑親和性 (Watanabe et al., 1987)、種皮形態 (Watanabe et al., 1999)、核DNA量 (Mishiba et al., 2000)によるCalibrachoaの分類を支持した。
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