研究概要 |
根域制限ベッドで栽培している7年生の'ピオーネ'(台木:SO4,土量:80l/樹)30樹を供試した。発芽期から果粒軟化期まで窒素濃度で60ppm,それ以降は20ppmに調整した総合液肥を与えた区を対照区とし,結実期以降の4時期から対照区の2倍濃度の液肥を与える区を設けた。高濃度施肥を早期から行うほど果実の着色が不良となった。アントシアニン生合成に関与する酵素を測定したが,アントシアニン蓄積との明確な関係は認められなかった。表皮,亜表皮液胞中のアントシアノプラスト(ACP)形成を比較すると,高濃度施肥を行う時期が早いほどACPの形成と肥大が抑制された。また,果皮中の無機成分を測定したところ,高濃度施肥区ではK,Ca含量が少なかった。そこで,ACP形成期の果粒から果皮を採り,傾斜させた濾紙上に置床し,培養液を下降法で流した。1/10濃度のNitsch培地を基本とし,培養液のN,K,Ca濃度を変え,アントシアニン蓄積とACP発達を比較した。アントシアニン蓄積については,N,Ca濃度を高めると阻害されたが,K濃度は影響しなかった。一方,ACP発達は,N,Ca濃度を高めると,その形成や肥大が抑制されたが,K濃度を高めるとACP形成が著しく促進された。以上の結果,過剰施肥によるピオーネ果実の着色不良は,生合成酵素の関与は少なく,果皮中のN含量が高まるのに対して,K農が低くなるため,アントシアニン合成とACP発達が抑制されるものと考えられる。
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