高齢化社会を迎えて消費者の健康志向が強まる中で、機能性成分を多く含む青果物の供給に対する要求は非常に高まっている。トマトは、リコペン、β-カロテンをはじめとするカロテノイド類を多く含み、その抗酸化作用等の機能性が注目されている。これらカロテノイド類は、トマト果実の成熟に伴って生合成・蓄積されるが、その分子機構に関しては不明な部分が多い。本研究では、カロテノイド合成系遺伝子群の発現調節におけるオクタデカノイド類シグナルの役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、普通種および成熟変異種トマト果実の様々な成熟ステージにおいて、カロテノイド合成系のリコペンサイクラーゼ等の各酵素遺伝子のオクタデカノイド類に対する応答様式を解析した。 普通品種および成熟変異体トマトの様々な成熟ステージの果実から果肉ディスクを作製し、エテフォンもしくはジャスモン酸メチルエステル溶液で処理を行った。各サンプルからRNAを調製し、トマトのカロテノイド合成系の各遺伝子やエチレンシグナル伝達に関わる遺伝子を特異的に増幅するよう設計したプライマーを用いて、RT-PCR法により、発現様式を解析・比較した。その結果、エチレンおよびジャスモン酸メチルエステルによって、それぞれ特異的に誘導される遺伝子を明らかにした。また、それら遺伝子の発現は、成熟ステージもしくは成熟変異体トマトにおいて、応答様式が異なっていた。 また、トマトにおけるオクタデカノイド類への応答についての研究、および内生オクタデカノイド類量の測定について、それぞれ実績・研究蓄積を持つ海外の研究者を訪問もしくは国際学会会場において面談し、討議、情報交換および研究現場の視察を行った。
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