本年度は下唇腺内容物の分析と発育に伴う量的・質的変動をさらに分析した。ワンダリング期の下唇腺における主要な成分である。まず220kタンパク質と180kタンパク質を精製を試みた。下唇腺を70%エタノールに浸し、内容物を固化したのち組織の部分を取り除き、その後、塩酸グアニジンで溶解し、その後、SDS-PAGEで成分を分離した。その後、マイルドな条件でタンパク質を染色し、目的のタンパク質部分を切り出すことで、精製を行った。精製した220kタンパク質と180kタンパク質を用いて、抗体をそれぞれ作成し、それぞれの反応性を追求したところ、それぞれ交差反応した。そこで、次に精製した両タンパク質をV8プロテアーゼで消化し両者のペプチドマップを比較した。その結果、両者のペプチドマップは極めて似たパターンを示した。これらの結果から、それぞれのタンパク質はお互いに近い関係にあることが示唆された。一方、5齢期の成分は220kタンパク質および180kタンパク質いずれに足しする抗体とも反応しなかった。上述と同様にV8プロテイナーゼで消化し、そのペプチドマップを調べたところ、180kタンパク質とは異なるパターンを示した。そこで、下唇腺を培養し、それぞれのステージに合成される成分を調べたところ、それぞれのステージに対応する成分の合成のみ確認され、5齢期とワンダリング期では合成される成分が全く異なることが明らかになった。 次に脱皮期および変態期での下唇腺内容物の取り替えのメカニズムを追究するため、内容物の消化に関与するプロテアーゼの検出と、クローニングを試みた。その結果、カイコにおいてはシステインプロテアーゼと思われる断片が検出されたが、エビガラスズメでは現在まで検出されていない。 今後、さらにエビガラスズメ下唇線内容物のクローニングと内容物の切り替えのメカニズムを追究する予定である。
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