研究概要 |
低分子量GTP結合蛋白質は(s-GBP)は、多数のスーパーフアミリーを形成し、細胞分裂、細胞増殖、神経関連分子などの分泌に関与している。一方、Prothoracicotropic hormone (PTTH)は、昆虫の変態、脱皮を引き起こすステロイドホルモンであるecdysoneの分泌を引き起こす神経ペプチドである。阻害剤を用いた研究により、この神経ペプチドの脳内からの分泌には、s-GBPが関与し、その分泌過程でs-GBPがprotein kinaseによりリン酸化されることがわかった。 本研究では、神経ペプチド分泌に関与するs-GBPが果たしている役割を分子レベルで明らかにするためにs-GBPをリン酸化するprotein kinase及びリン酸化されたs-GBPの分子機能を調べる。 そこで、まず、蚕の脳より8種類のs-GBP(脳内で神経ペプチドなどの分泌に関与するRab蛋白質;Rab1,2,3,8,14及び新規の3種類のRab)の部分長cDNAをRT-PCRにより得た。この内Rab1,8,14の全長cDNAを大腸菌で発現させ、精製した。Rab14については、その分子特性を調べ、GDPに結合すること、脳内のprotein kinaseにより、リン酸化されることを明らかにした(Archives of insect biochemistry and physiology,2003)。一方、蚕脳より、各種カラムクロマトグラフイーを用いて、各種protein kinaseを分離、精製した。そのうち、nucleoside diphosphate kinaseについては、その詳細な分子特性を調べ、このkinaseが(1)tetramerを形成すること(2)リン酸化により調節を受けること、(3)protein kinase活性を有することを明らかにした(Archives of insect biochemistry and physiology,2002)。今後、これらのprotein kinaseを用いてs-GBPをリン酸化させ、リン酸化されたs-GBPの分子機能を解明する。
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