研究概要 |
モディファイアー結合機構は、タンパク質の分解、輸送、機能変換などを通して生体内の様々なイベントに関わっており、重要な役割を担っていることが知られている。本研究は、ウイルス感染機構の解明の一助となるべく、モディファイアー結合機構に関わるバキュロウイルスの遺伝子を同定し、その機能がどのようにバキュロウイルス感染に関わるのかを調べることを目的としている。 近年、RINGフィンガーモチーフを持つタンパク質が、モディファイアーリガーゼとして機能する例が多数報告されている。一方、バキュロウイルスの一種であるカイコ核多角体病ウイルスBmNPVは、推定136の遺伝子を持つが、そのうちの実に6つがRINGフィンガータンパク質をコードしている。そこで本年度は、BmNPVにコードされる6つのRINGフィンガータンパク質(IAP1,ORF35,IAP2,CG30,IE2,PE38)がモディファイアーリガーゼ(E3)、特に、タンパク質分解シグナルなどとして良く知られるユビキチン化に関わるユビキチンリガーゼとして機能するかどうかについて重点的に解析した。まず、ユビキチン化のための偽基質としてマルトース結合タンパク質(MBP)を用い、6つのRINGタンパク質をMBPとの融合タンパク質(MBP-RING融合タンパク質)として大腸菌で発現させた。次に、E3アッセイのために、ウサギ網状赤血球系やユビキチン化因子の再構成系などのin vivoの系を用い、MBP-RING融合タンパク質がユビキチン化されるかどうかについて解析を行った。その結果、IAP2,IE2およびPE38はZnイオン依存的にユビキチン化能を示し、ユビキチン結合酵素であるUbc4/5と協調して機能することが明らかになった。また、点変異実験によって、これらのユビキチン化能はRINGフィンガー依存的であることが示された。
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