モディファイアー結合機構は、タンパク質の分解、輸送、機能変換などを通して生体内の様々なイベントに関わっており、重要な役割を担っていることが知られている。本研究は、ウイルス感染機構の解明を目指し、モディファイアー結合機構に関わるバキュロウイルスの遺伝子を同定し、その機能がどのようにウイルス感染に関わるのかを調べることを目的として行われた。 前年度までに、BmNPVのRINGフィンガータンパク質が、RINGフィンガー領域依存的なユビキチンリガーゼE3として機能しうることを明らかにした。そこで、その中の一つであり、ウイルスのDNA合成や転写制御に関連すると考えられている、IE2について更に詳細な解析を試みた。まずウェスタン解析によって、ウィルス感染細胞におけるIE2の発現を経時的に追ったところ、IE2は感染後2時間から発現され、24時間までに徐々に減少・消失することが明らかになった。そこで、プロテアソーム阻害剤MG132をウイルス感染細胞に処理し、ウェスタン解析を行ったところ、ユビキチン化を示すIE2の移動度の変化が見られた。このことから、IE2の消失はプロテアソームを介した分解によるものであると考えられた。一方、共焦点レーザー顕微鏡観察により、感染細胞の核内でIE2が形成するfoci(点状構造)が感染後12時間までに消失することが分かった。このfociの一部がウイルス複製領域(IE1局在領域)に隣接していることから、この特徴的な局在は感染に重要であると考えられた。そこで、感染細胞にMG132を処理し観察したところ、通常より拡大したfociを形成したことから、IE2はここに蓄積するものと考えられた。また、IE2のE3活性を欠失させた変異体であるRING領域変異体を、細胞にトランスフェクションした場合にも、MG132処理の際と酷似したfociの拡大が見られた。以上より、IE2のE3活性が自身の発現消長および細胞内局在を調節していることが明らかになり、これによってウイルス複製を制御することが示唆された。
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