有害な重金属を含有する土壌で栽培しても可食部に重金属が移行しない作物があれば、重金属を含有する農用地でも安全な食料生産が可能になると考えた。そこで器官特異的なCd集積植物の選抜を行ったところ、野生植物のミゾソバはCd耐性でCdを茎に特異的にしかも高濃度に集積できることを明らかにし、その器官特異的なCd集積およびCd無害化機構について解析を行っている。 これまでにミゾソバは茎にCdを高濃度集積するが、その集積が節および導管とその周辺細胞の細胞壁であることを明らかにしている。そこで茎から細胞壁を抽出して各成分に分画し、Cd分析を行うことでさらに詳細なCd集積部位を検討した。その結果、Cd含有率はペクチンでもっとも高く、ヘミセルロース、セルロースの4〜5倍であった。またペクチン量はセルロース、ヘミセルロースロースと比べると存在量は少ないものの、Cdが集積している下位の茎ほど多い傾向が認められ、茎におけるCd集積にペクチンの関与が示唆された。今後は、茎節位毎の細胞壁成分分析やCdとの結合状態等を明らかにしていく予定である。一方でミゾソバにはメタロチオネインやフィトケラチンによらない無害化機構の存在も示唆されている。ミゾソバの導管液や茎搾汁液中にはCd処理で増大、誘導される複数のニンヒドリン陽性物質が大量に生成されており、これが無害化に関与しているものと推察し、この物質の同定を試みた。Cd処理した茎から搾汁液を採取し、TLC展開してCd処理で最も増加する物質のF1スポットを分離・回収後H^+-NMRおよびFAB-MS解析した。その結果、分子量約300でグルタミンとフルクトースを含む物質であることが推定されたが、不純物が存在したため同定することが出来なかった。今後、他のニンヒドリン陽性物質とあわせてさらに精製したもので解析を行い、無害化機構の実体を明らかにしていく予定である。
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