研究概要 |
酵母Cryptococcus humicolus UJ1は、D-アスパラギン酸(D-Asp)を唯一の窒素源として培養した時にのみ、D-アスパラギン酸酸化酵素(DASPO)を誘導合成する。このことから、本酵母においてD-Aspの立体構造を特異的に認識する遺伝子発現制御機構の存在が示唆された。本研究は、本酵母におけるDASPOの誘導発現に関わる因子を解明することにより、D-Aspの立体構造に特異的な遺伝子発現制御機構を解明することを目的とする。本研究の研究期間内では、(1)DASPO遺伝子の単離、(2)プロモーター中の転写誘導に必須な配列の解明、(3)トランスに作用する転写活性化因子の遺伝子単離を目的とする。 本酵母から精製したDASPOの部分アミノ酸配列をもとにプライマーを設計し、ゲノムDNAを鋳型としたPCRにより本酵素の部分遺伝子断片を得た。この遺伝子断片をプローブとして用い、ゲノムDMライブラリーから本酵素遺伝子全長を含むDNA断片を単離した。また、本酵素のcDNAを合成し、その塩基配列を解析した。本酵素遺伝子は1,110bpからなり、370アミノ酸からなる分子質量39,459Daのタンパク質をコードしていた。本酵素の推定アミノ酸配列には、D-アミノ酸酸化酵素(DAO)間で保存されている触媒残基やFAD結合モチーフが保存されていた。また、C末端にはペルオキシソーム標的シグナルがみられた。本酵素の推定アミノ酸配列は哺乳動物由来のDASPOと約27%、カビ由来のDAOとは約30%の相同性を示した。本酵素遺伝子を大腸菌内で発現させたところ、発現産物のDASPO活性が確認された。 現在、本酵素遺伝子の大腸菌での大量発現を検討するととともに、本酵素遺伝子のプロモーター領域の塩基配列を解析している。また、本酵素の生理機能について解析を行っている。
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