研究概要 |
酵素を用いてケトンのカルボニル基を立体選択的に還元し、光学活性な2級アルコールを与える酵素的不斉還元反応は数多くの研究例がある。しかし、炭素-炭素2重結合の酵素還元に関しては報告例が少ない。本研究ではketoisophorone(KIP)から有用カロテノイド前駆体であるダブルキラル化合物actinolを酵素反応で生産する方法を検討した。 KIPの2重結合を立体選択的に還元し、actinolの前駆体である(6R)-levodioneを与える酵素をパン酵母(Saccharomyces ceravisiae)より精製し、それがOld Yellow Enzymeであることを明らかにした。S.cerevisiae中には2つのOYE(OYE2,OYE3)が存在することが知られている。S.cerevisiaeのゲノム情報をもとに両遺伝子をPCR法でクローニングし、構築した発現プラスミドで大腸菌を形質転換した。得られた形質転換体の細胞抽出液を用いて検討したところ、KIPの不斉水素添加にはOYE2が適していることが判明した。補酵素再生には天野エンザイム社のGlucose dehydrogenaseを使用した。生成した(6R)-levodioneをすでにクローニング済みのCorynebacterium aquaticum M-13由来のlevodione reductaseと反応させると、有用キラルビルディングブロックであるactinolが得られた。条件検討の結果、10mg/mLのKIPから9.5mg/mLのactinolが生成し、光学純度は94%e.e.であった。
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