研究概要 |
Penicillum chrysogenum 31B株の前培養液を培地(0.2% NH4NO3,0.1% K2HPO4,0.05% MgSO4・7H2O,0.05% KCl,0.001% FeSO4,0.1% peptone,0.1% glucose,2% sugar beet pulp, pH 5.0)に植菌し、30℃で10日間、振盪培養を行った。培養上澄を限外ろ過膜により濃縮し、硫安分画(80%飽和)、陰イオン交換(ResourseQ, MonoQ)、陽イオン交換(ResourseS, MonoS)、ゲルろ過クロマトグラフィー(Superdex 75)によりフェルラ酸エステラーゼを単離した。本酵素の分子量は62,000で、エンドグリコシダーゼ処理により分子量が60,000に減少したことから、分子量2,000の糖鎖が付加していることが明らかとなった。反応最適条件はpH 6.7、50℃であり、酵素安定性はpH 4-7、40℃までであった。金属イオンに対する影響を検討した結果、Ag+およびCu2+により酵素活性は大きく阻害された。種々のフェノール化合物(フェルラ酸、バニリン酸、p-クマル酸、シナピン酸、シリング酸、カフェイン酸)のメチルエステル化物を化学的に調整し、これらに対する基質特異性を検討した。本酵素はメチルフェルラ酸とメチル-p-クマル酸に対して同程度の高いエステラーゼ活性を示し、これまでに報告されているAspergillus niger由来のフェルラ酸エステラーゼとは異なる特異性を持つことがあきらかとなった。
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