本年度は、葉緑体へ導入することにより、光合成能力の向上、生育促進、物質生産能増大がみられたラン藻FBP/SBPase遺伝子(fbp/sbp)に加え、病害応答・耐性に重要である糖質加水分解酵素の一つであるシロイヌナズナキチナーゼ遺伝子(AtchiV)を同時に植物に導入するためのプラスミドDNAの構築と、シロイヌナズナへの遺伝子導入を以下の手順に従って行った。 ラン藻Synechococcus PCC7942由来fbp/sbpは、葉緑体で光誘導的に発現させるために、構造遺伝子の上流にトマトRubiscoスモールサブユニットのプロモーターおよびトランジットペプチドのコード領域を連結した遺伝子カートリッジ(PrbcS-fbp/sbp-Tnos)を作成した。一方、AtchiVは、細胞質で恒常的に発現させるためにバイナリーベクターpBI121のCaMV35Sプロモーターの下流に連結し、プラスミドDNA(pBI-P35S-AtchiV-Tnos)を構築した。pBI-P35S-AtchiV-Tnosを制限酵素により1カ所のみ切断し、そこにPrbcS-fbp/sbp-Tnosを挿入することにより、多重プラスミドDNA(pBI-PrbcS-fbp/sbp-Tnos-P35S-AtchiV-Tnos)構築した。このプラスミドDNAをアグロバクテリウムに導入後、シロイヌナズナに感染、感染植物からの採種を行った。現在、抗生物質を含む培地上での選抜を試みている。
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