研究代表者は、これまでフェノールオキシダーゼインヒビター(POI)に着目してその立体構造も含めた機能構造を明らかにし、またその情報を元に作成した分子プローブを用い活性型フェノールオキシダーゼ(PO)の機能構造解析を進めてきたが、イエバエ蛹中に見出されるPOIは活性型PO総量と比較し少量であり、これはPOI以外のPO阻害因子の存在を示している。本研究においては、POIとは異なる真の新規PO活性制御因子(以下PARFと略す)の単離・同定を行なうと共に、生体内における役割を明らかにする事を目的として行っている。 まず初年度である平成14年度は、イエバエ蛹からのPARFの単離・精製とその一次構造解析を試みた。PARFの精製は、既に作成した活性型PO固定化アフィニティーカラムを中心に各種クロマトグラフィーを駆使する事によって行なった。この際、蛹体液抽出液から等電点沈殿により、PO-PARF複合体を含む画分を得、弱い加熱処理により遊離される画分をろ過後、限外ろ過膜(MC 50kDa)で濃縮を繰り返す事により、POIを除去し、ここで得られた濃縮液を、粗PARF画分としてDimethoxy-β-alanyldopamin共存下活性型PO固定化カラムに供し、部分精製PARF画分を得た。PARFは、ゲルろ過法による分子量測定においては、42kDaであると観測された。現在、逆相系HPLCも含めた精製を行い純粋なPARF標品を得るべく実験を進めている。 ところで、PARF画分は当初の予備実験結果にたがわず、POIと比較してPO阻害活性としてKiは10分の1であるが、活性総量においては100倍以上の回収量を示しただけでなく、これは幼虫体液中に見出されるPO活性総量にほぼ匹敵する量であることから、変態時における顕著なPO活性の低下は、主にこのPARFによってもたらされている可能性が強く示唆された。
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